シリーズ記事の第2弾へようこそ。これはプレイヤーダイナミクスがゲームに与える影響について、透明性を高めるための記事になります。第1弾の記事では、プレイヤーダイナミクスデザインの現状についての論考を述べました。今回は、ライアットの全員がプレイヤーダイナミクスデザイナーのように考えられるようになるまでの過程を詳細に見ていきたいと思います。プレイヤーダイナミクスの記述に役立つ言葉も紹介し、プレイヤーダイナミクスがよりよいコミュニティーやソーシャル構造、ゲームを形作るために重要な理由についても述べていきます。 

多様な考え方を身に着ける

「多様な考え方を身に着ける」──このシンプルな文章を頭に入れることで、役割にかかわらず、誰でもすぐにプレイヤーダイナミクスの考えを取り入れることができます。 

非デザイナーにも使ってもらえるように、「多様な考え方」という単語は、デザイン思考や人間中心デザインと同様の概念になっています。これらのアプローチは、ユーザーフレンドリーなプロダクトを作るのが主題ですが、プレイヤーダイナミクス─多様な考え方のアプローチ─は、ソーシャルフレンドリーなプロダクトを作ることが主題になっています。 

多様な見方とは習慣であり、以下を念頭に置いて仕事や生活を進める手法のひとつです: 

  • 孤独な環境では行動は起こらない 

  • 行動とはある個人がある環境に置かれた時の作用であり、周囲の他者に影響を受けることも多い

  • 各個人はさまざまな偏見(個人や文化などに起因する)を持っていて、それは私たちが世界を見たり接したりする方法を形作っている

  • 包括的なアプローチは、より良いプロダクトを作り、接する人間を増やすための、より健全なソーシャル環境を作ることにつながる

多様な考え方を身に着ければ、プレイヤーダイナミクスデザイナーのように考えることができます。 

プロダクト開発において、多様な考え方を持つこととは交渉であり、人間と空間の間に健全な相互作用を組み立てることでもあります。 

別の言い方にすると、多様な考え方を持つというのは、参加者全員が安全で、楽しむことを歓迎されていると感じられる、正しい雰囲気のハウスパーティー(ぱっと思いついた概念です)を企画段階から主催するようなものです。偏った考え方しか持っていないというのは、参加者全員が「あなたが望んでいるパーティー」のみを同様に望んでいると考えることです。そのパーティーに数百万人の人々が世界中から参加していて、みんながそれぞれに理想のパーティーについての意見を持っている…と考えてみてください。

これがプレイヤーダイナミクスの核となる考え方ですが、必ずしもデザイナーのみが活用できるものではありません。多様な考え方を実践する企業なら、世界中の人々と共鳴できるプロダクトを作れるチャンスが増えるでしょうし、そのプロダクト開発を多様で包括的な環境にできます。 

多様な考え方のあるプロダクト開発

プロダクト開発において多様な考え方を持っていれば、ダイバーシティファーストなデザインを達成することはかなり容易になるでしょう:
 
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ダイバーシティファーストなデザインと開発のプロセス

 

このアプローチを自分たちのチームに採用すれば、できる限り最高の体験を、できる限り多くの人々に届けるために、十分に正しい視点を得ることができるでしょう。 

システムと構造が正しく配置されれば、完成されたものができます。アクセシビリティ、アイデンティティ、文化特有の偏見、個人の安全といったニーズ──これらの全てとさらに多くのものが、先駆的なプロダクトの考え方に組み込まれるでしょう。正しいシステムなら、グローバルな考え方と、住んでいる地域を区別しすぎない見方(度を過ぎた区別は自然と進みがちです)を確保できます。 

では、ダイバーシティファーストなプロセスを作る時、プレイヤーダイナミクスの中でどんなツールが使えるのでしょうか?あまり時間がありませんので詳細は省きますが、こちらに概要を用意しました。

  • ペルソナ - 調査をもとに、接している人々の区分を表現した、フィクションのキャラクター。 

  • 行動ごとの集団分類 - 共通した行動パターンを学習して抽出する。

  • データの視点の報告 - 包摂の問題の報告に、複数のデータの視点を含めることが有用。

 

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行動ごとの集団分類:プレイヤーダイナミクスの有用なツール

 

以上のものは、実際の状況を踏まえるための他のツールや、集めた情報全てと組み合わせることをおすすめします。

  • ダイナミックな表示 - 同時にプレイしている複数の人々をマップに表示する。これらは再現度の高いスライドショーとともに、画面の流れを示すのに利用できる。 

  • 複数視点のプロトタイプ - 最終品質でないプロトタイプを複数作ることで、複数の人々の目を通して同時にデザインとレビューを行える。リアルタイムでソーシャルなやり取りを開発するには、素晴らしい手段。

  • 対立マップ - 対立するグループのレンズを通して、妨害行動かもしれない、あるいは良い行動かもしれない仕様を評価するのに便利なツール。

 

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教育用途に設定した、架空のゲームを用いた対立マップの例

 

これらすべてのツールを組み合わせて使うことで、多様な考え方を持ち、ダイバーシティファーストに役立てられます。  

最後に

ご存知の通り、このトピックは複雑で、現実に苦痛をもたらしています。私たちは理解しています。これらのゲームの開発を続けるとともに、プレイも続けます。コミュニティーの懸念の声を聴きます。私たちは問題から目を背けず、私たちのゲームをプレイするすべての人々の体験を改善するため、実際に変化をもたらせる長期的な解決策を模索しています。 

ここでの私たちの目標は、私たちがこれからもゲーム体験を作り続けようとする時間の長さと、健全なゲーミングコミュニティーを育てていく決意を示すことです。時間の長さは、哲学的、学術的、あるいは科学的な対話に不満を生じさせることもあります。プレイヤーの行動を全員が満足する方法ですぐに変えられる「銀の弾丸」などありません──挑戦を続けている私たちを信じてください。いろいろなものを改善するために、新しいアプローチを模索しています。以前と同じやり方では、以前と同じ結果しか出ないでしょう。 

そして不運なことですが、どれだけ私たちがデザインに長けていても、皆さんがプレイするゲームが本当に悪い経過になり、そのせいでチームメイトが疲れてしまう可能性は常にあります。私たちはゲームを妨害する行動があればいつでも、すべての試合に介入し続けます。 

この問題への解決策は、面倒ごとを起こす人たちとモグラたたきを遊ぶようなものではありません。そしてその解決策は、システムに実装されるたったひとつの仕様に留まらないでしょう。 私たちの会社とエコシステム全体をすっぽりと取り巻くものになるはずです。 無数の変更と哲学が組み合わさって、ゲームの核に取り入れられることになるでしょう。こうした変更が実装されることで、皆さんの試合が降参による敗北よりも多くのGLHFで満たされますように。 

これには時間がかかります。

幸い、私たちはひとりではありません。250を超える企業たちがこの困難に立ち向かっています。私たちには共通の目標があります──誰でも歓迎され、もっと親切で、楽しめるゲーミング体験を皆さんにもたらすことです。ですので最良の方法を見つけたら、共有していくつもりです。