皆さん、こんにちは。Shaun “UNCONKABLE!!!!” Riveraです。私はライアットからリリース予定の2D格闘ゲーム、プロジェクト Lのアソシエイトゲームディレクター兼ゲームプレイデザインリードを務めています。開発チームとしての抱負や現在の取り組みについて、Tom Cannonからちょうど最近の状況に関するお知らせがあったかと思います。私からも、今後登場するファイター(他のゲームで言うところのチャンピオン)であるイラオイについて、ちょっとした最新情報をお伝えできることになり、とても嬉しく思っています。イラオイの制作に関する初期のアイデアについて開発チームからお話しする前に、まずは私からプロジェクト L全体の開発プロセスに関して少しお伝えしたいと思います。

プロジェクト Lの開発プロセスは、どのチャンピオンを追求していきたいか決定するところから始まります。私たちの最終的な目標は、このゲームに多様で包摂的なファイターたちを揃えることです。つまり、皆さん一人ひとりが心から共感できるチャンピオンでプレイできるようにしたいのです。それを実現するには、戦闘スタイル、テーマ、アーキタイプ、チームのシナジー、人種や民族、個性、アイデンティティー、サイズをはじめとする、数多くのことを考慮する必要があります。参戦させたいチャンピオンが決まったら、次はいつ開発を始めるか計画します。その後、デザイン、ナラティブ、アート、エンジニアリング、技術アート、QA、プロダクション、オーディオなど、さまざまな分野のメンバーで構成されるチームを作成します。 

全体で見ると、いくつかの段階を経てチャンピオンの開発を進めていくわけですが、今回は最初の段階である「DNA」に関してお話ししたいと思います。リーグ・オブ・レジェンドやVALORANTのキャラクター開発ストーリーを読んだことがある方は、それがどういったものかご存知かもしれません。この「DNA」と呼ばれる段階において、デザイナー(Designer)、ナラティブライター(Narrative writer)、コンセプトとアニメーションのアーティスト(Artist)は可能性を探ることに集中します。つまり、何かエキサイティングなものが生まれるまで、格好いいビジュアルやテーマ、技のアイデアなどについて、お互いにインスピレーションを与え合うのです。

そこから、非常にラフなモデルや技を使用して、ゲームにアイデアを落とし込んでいきます。方向性を完全に決定したら、チームはチャンピオンの開発に取り組む他の分野のメンバーと共に作業を開始します。この段階に関しては、後日ご説明したいと思います。

 

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ここからは、イラオイに関してお話ししていきましょう…

プロジェクト Lには、リーグ・オブ・レジェンドから多数のチャンピオンが参戦します。いくつか例を挙げると、がっしりとしたジャガーノート、俊敏なアサシン、強力なメイジなどです。ただし、プロジェクト Lに誰を登場させるか決定する際は、慎重になるよう心がけています。

ゲームプレイを引き立たせると共に、このゲームに登場することで「輝く」ことができる、つまりそのテーマ性をさらなる高みへ押し上げることができるチャンピオンを選びたいのです。ジャガーノートならよりがっしりと、アサシンならより俊敏に、メイジならより強力に、といった具合です。しかしそれ以上に大切なのが、「そのチャンピオンらしさ」を維持するということです。私たちはあくまで、プレイヤーの皆さんがこれらの馴染み深いキャラクターに期待していることを実現したうえで、ちょっとしたプラスアルファをお届けしたいと考えています。

言ってみれば、そのチャンピオンが今までにしたことのないようなことをプロジェクト Lで皆さんに見てもらい、「うわぁ、こんなことできるの?でも、このチャンピオンらしいよね」と思っていただきたいのです。

イラオイをゲームリリース時のメンバーに加えようと提案したのは、ナラティブディレクターのScott “Jaredan” Hawkesでした。リーグ・オブ・レジェンドにおいて、私がイラオイを敵にしたときの体験(特に、最高のタイミングでアルティメットを決められたときのこと)を考えながら、イラオイのストーリーとテーマについて彼の話を聞きました。また、ルインドキング:リーグ・オブ・レジェンド ストーリーにおけるイラオイの素晴らしい活躍を体験し、プロジェクト Lでイラオイというチャンピオンのテーマ性をどうしたら高められるかチームと話し合っていくうちに、私はイラオイを参戦させたくてたまらなくなっていました。すべてのイラオイファンに喜んでもらいつつも、何か特別なものを作れるような感じがしたのです。この記事を読み終えた後、皆さんにも同じように感じていただけたら嬉しいです。

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ナラティブディレクター、Scott “Jaredan” Hawkes:

各チャンピオンにおける私たちの目標は、ただ単にプレイヤーが期待するものをお届けすることではありません。さらにその上を狙い、プレイヤーの皆さんが見るに相応しいものをお届けすることを目標にしています。これはイラオイについても例外ではありません。

ナラティブに関する作業は、イラオイの中核となる事実を定義づけ、イメージを固めるところから始まりました。つまり、昔のイラオイ、今のイラオイ、そしてプロジェクト Lでのイラオイがどんな人物かを決めるのです。ここでの私たちの目標は、「なぜイラオイを開発すべきなのか?」という問いに答えることでした。

イラオイがリーグ・オブ・レジェンドでリリースされたのは、約7年前です。それ以来、彼女はトップレーナーの定番(もしくは悪夢?)となっています。また、レジェンド・オブ・ルーンテラでは敵を圧倒する姿を、ルインドキングでは世界を「破滅」から救う姿を見せてきました。 

 
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私はライアット本部のIP戦略チームからサポートを得つつ、なぜイラオイが特別なのか、そして世界中のプレイヤーがなぜイラオイを気に入っているのかをまとめた、チャンピオン概要を書きました。

イラオイは「ナーガケイボロスの真実の担い手」です。ナーガケイボロスは、生命の神、海の嵐、そして流れであり、基本的に巨大なクラーケンとして描かれています。イラオイをはじめとするナーガケイボロスの信仰者たちは、ビルジウォーターやイラオイの故郷であるブール島を含む列島、「サーペントアイル」の出身です。

リーグ・オブ・レジェンドにおけるイラオイのゲームプレイは、「神の目」として知られる黄金のアーティファクトを使い、個人の価値を試すことに焦点を当てています。巨大な偶像を振るい、相手の身体から魂を引き剥がし、霊体の触手を召喚して何度も叩きつけます。

リーグ・オブ・レジェンドの世界において、ナーガケイボロスの試練を生き延びた者は、正しい道を歩んでいるとみなされ、人生における真の目的を探求すべく先へと進むことを許されます。その一方で試練に失敗した者は、自らの人生を推し進める義務を果たしておらず、世界の流れを妨げているという事実を明確に突きつけられます。つまり、すべての人間が生き延びられる体験ではないのです。

これらすべての情報を基に、私たちはイラオイの中核となる事実を、「自らが持つ決して止まらぬ力の体現者となるよう人々を鼓舞する、パワフルでカリスマ的なスピリチュアルリーダー」として定義しました。イラオイは、その大柄な肉体が放つ存在感と自信、そして信念に裏打ちされた堂々とした態度で人々の注目を集め、その場の空気を支配します。

その後は作成した概要を基に、デザインやアートなど、他の分野のリードと作業を進め、イラオイを開発するうえでの最終的なビジョンを定めていきました。私たちはこのようにして、たとえ登場したことのないジャンルにおいても、イラオイというキャラクターを瞬時に認識できるようにしたのです。さらに重要なのは、今回の参戦をイラオイの伝説を成長させる機会として利用したということです。格闘ゲームほど、イラオイが輝く舞台として完璧な場所はありません。

イラオイのイメージを私たちの中で明確にすることにより、すでにイラオイについてより深くまで知っているプレイヤーにも、彼らの愛するキャラとしてプロジェクト Lのイラオイを見てもらうことができます。また、この明確化の作業によって、最高に熱心なファンにも喜んでもらえる「ジャンルという壁を打ち破る」イラオイの開発に、チームが熱中して取り組めるようになるのです。イラオイの場合は、「魔法の触手で壁を引き剥がして、それで敵を叩きのめすような」と形容した方が適切かもしれませんね。

個人的な話ですが、2015年にリーグ・オブ・レジェンドのイラオイを開発して以来、私はイラオイという人物が大好きで、それは今後描かれていく彼女についても同様です。イラオイはリーグ・オブ・レジェンドで最も人気のあるチャンピオンとは言えませんが、その傷だらけの拳と敬虔な心、そして陽気な振る舞いによって(そして、これから皆さんにお届けする数々の新体験によって)、プロジェクト Lのスーパースターになってくれると信じています。

アート

クリエイティブディレクター、Mike “zatransis” Henry:

ナラティブからの情報でチャンピオンのことをよく理解したら、ビジュアルの制作に取りかかります。そのチャンピオンがどのような人物か分かっていると、もっと言えば、そのチャンピオンのビジュアル表現をすべて見比べられる状況だと、その魅力をより一層引き立てることができます。イラオイに関しては、すでに多くのビジュアル表現が存在していました。

チャンピオンによっては、ビジュアル面を大きく変化させるのに向いている場合もありますが、外見を大幅に変えてしまうとつじつまが合わなくなるチャンピオンもいます。イラオイの作業を始めたとき、彼女が後者のタイプであることが明確になりました。

イラオイは非常に印象的な外見、つまり背が高くて、筋骨たくましく、人目を引く姿をしています。ですがそれ以上に、彼女は喜びにあふれ、精力的で、他人にも人生を精一杯生きるように求めるべきだと考えています。これらすべての内面が、イラオイの外見に反映されている必要がありました。

イラオイの体格は、リーグ・オブ・レジェンドにおけるチャンピオンたちの中でも非常にユニークです。そのため、重量挙げ選手や砲丸投げ選手を中心に、多くのスポーツ選手を参照しました。イラオイが巨大な武器を容易に持ち上げるように、物を易々と持ち上げることに多くの時間を費やしている女性を主に参照したわけです。

 
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イラオイはルーンテラにおける最新の流行ファッションに敏感というわけではありません。彼女の服装には、きちんとした意図があります。そのため、彼女の服とカラーパレットは、大半のプレイヤーがイラオイであると認識できるようなものを基にすることにしました。ただそれと同時に、配色を少し調整して新鮮な感じを出すとともに、プロジェクト Lの視点と全体的なアートスタイルを十分に活用しています。

ベースとなるリーグ・オブ・レジェンドの姿やその民族の姿を忠実に再現できるように、多大な考慮を重ねて、イラオイの武器や腕当て、そしてイヤリングまで、様々な部分に小規模なデザイン変更を行っています。

 

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また、イラオイがどのように動くかについても考える必要がありました。そのために行ったのが運動研究です。格闘ゲームは非常に動きのあるジャンルですので、開発の初期段階で動きを短期間で模索できるよう、コンセプトアーティストたちはアニメーターのためにイラオイの様々なポーズを描きました。

イラオイの格闘スタイルは非常にユニーク(重い黄金の偶像と触手の組み合わせ)なため、この運動研究によって、剣や斧を使った場合以上に未知の部分まで理解することができました。イラオイの触手の機能や動き、プレイヤーが感じるイラオイの力、イラオイに殴られることがどれほど壊滅的であるかを、しっかりと再現したかったのです。

 

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イラオイのポーズを模索するためにケトルベルを購入したシニアアニメーター、Guk Yun “Yunscoming” Kwon

 

運動研究が完了すると、アニメーターたちは初期バージョンのイラオイで作業を行い、彼女のサイズやプロポーションがゲーム内でどのように感じられるかを確認しました。運動研究のおかげで、アニメーターたちはゲーム内でポーズを取らせ、格闘ゲームという背景の中でイラオイのプロポーションがどのように見えるかを確認できたのです。

それが決定すると、ゲームデザインの段階に移ります。イラオイの技一覧をどうするか、それらをどのようにゲーム内で実装するかを考えるのです!

ゲームデザイン

ゲームデザイナー、Caroline “Riot Shyvana” Montano:

私はリーグ・オブ・レジェンドではトップレーンでイラオイをメインにプレイしていますので、彼女のゲームプレイに関してはかなりよく知っていますし、プロジェクト Lに登場すると決まって喜ばしい限りでした。このゲームでイラオイのデザインに取り組めることを光栄に思っています。

イラオイのDNAフェーズを開始した際、私たちは彼女の中核となるチャンピオン像を理解するため、イラオイの物語や重要な瞬間について深く掘り下げました。また、あらゆるバージョンのイラオイからインスピレーションを集め、プレイヤーがイラオイをプレイする動画も見ました。何がイラオイを力強い人物として感じさせているのか、しっかりと理解したかったのです。

初期段階で決定した主な事項のひとつは、大きな身体にするということでした。つまり、大きな当たり判定(ハートボックス)を持ち、強力な打撃で動きは少しゆっくり、そして学ぶのは簡単であるものの、マスターするのが困難なキャラクターということです。

イラオイは巨大な偶像を使って攻撃する、強くて筋骨たくましい女性です。そのため、自分が敬う神の力や魔法の力などを利用するのでなく、自らの力で相手を殴る方がつじつまが合います。

また、触手も重要な要素です。イラオイの神、ナーガケイボロスは触手を持った海の怪物であり、イラオイの技にそのイメージが表現されている必要がありました。しかし、ナーガケイボロスはイラオイの攻撃を強化するだけでなく、相手の魂を奪う力も与えてくれます。

どちらのほうが「より主要な」力であるかを考えた際、イラオイ自身が力の源であり、ナーガケイボロスはそれを支援しているという形を取ることに決定しました。特にイラオイが何の苦もなく巨大な偶像を振り回すことを考えると、この説明は納得いくはずです。

 
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これらすべてのリサーチを利用して、イラオイの目標と枠組みを作成しました。これにより、どういうキャラクターに仕上げるか、何がイラオイの中核から離れすぎているかを判断できるようになりました。

イラオイの目標

  • イラオイは神とともに戦う:ナーガケイボロスは絶えず威圧的な雰囲気を漂わせる存在であり、イラオイには支援を授け、敵には恐怖感を与えます。

  • ゆっくりだが、常に動きがある:イラオイは常に動いています。そして、動こうとしない者に罰を与えます。これは彼女の敬う神の重要な理念のひとつなので、ゲームプレイを通してこれを表現したいと思いました。 

  • 圧倒的なプレッシャー:攻撃を受けるか、攻撃をブロックするしかない状況にひとたび敵を追い込めば、そこはイラオイの独壇場です。相手には自分の思い通りの動きしかさせません。

イラオイの枠組み

  • イラオイが力の源であり、ナーガケイボロスはその支援:イラオイの主要な力の源は、彼女の肉体的な強さです。神の触手は、あくまでもイラオイを支援する存在です。ナーガケイボロスがメインスターなわけではないのです。

  • シンプルで分かりやすい:イラオイのメインとなる攻撃は少し短めの強攻撃、長めの強攻撃、そして触手による同時攻撃/連続攻撃であり、イラオイや多数の触手の状態を管理するような複雑さはありません。

  • 神を操る者ではない:イラオイが神に命令しているように感じさせることは避けています。イラオイは偶像から出現する触手をコントロールできますが、独立して出現する触手は、あくまで贈り物のように感じられるべきであり、自ら行使していると感じられるべきではありません。努力して「贈り物」を獲得しなければ、それを使用することはできないのです。

  • ゾーニングをするキャラクターではない:イラオイは触手による攻撃で、相手との距離を保ち続けるタイプではありません。触手の攻撃によって隙を作り、敵の懐に飛び込んで、自らダメージを与えるキャラクターです。

イラオイをアーキタイプで表現するならば、おそらく「身体の大きなジャガーノート」でしょう。神の力による支援を得た、圧倒的な強さの破城槌です。イラオイは得意とする中距離での攻撃が可能になると、圧倒的な強さを発揮するヘビーヒッターであり、絶大なプレッシャーで相手を破壊します。 

私たちはこれらの目標と枠組みでいけると確信を得ると、必殺技と通常攻撃をデザインして、初期のプロトタイプに実装しました。最初のバージョンでは、さまざまな距離で触手を出現させるイラオイの能力を中心に取り組みました。立ち上がりの速い近距離の触手、立ち上がりが普通の速さの中距離の触手、そして立ち上がりの遅い長距離の触手です。

プレイするのは楽しかったのですが、このようなデザインはイラオイを人形遣いやゾーニングキャラのように感じさせてしまいました。これは、私たちの目標と枠組みからはずれています。イラオイが偶像で相手を攻撃することこそ、私たちの強調したい面であるのに対して、このモデルでは地面から生えたナーガケイボロスの触手を使用することが、ダメージに直結しているように感じました。

まだ開発は初期段階であり、色々と模索している状態ですが、イラオイから離れた固定距離に触手を出現させることが、私たちの目指している方向性です。そして、触手はイラオイが相手に攻撃を当てる(ヒット時またはブロック時)ことができて初めて出現します。 

この小さな変更は、プレイテストでのゲームプレイに、すでに大きな違いを生み出しています。ゾーニングキャラのように遠くから触手を召喚して、好きなようにコントロールするのではなく、イラオイが相手に近づき、その際に触手も相手を攻撃するというモデルに変わりました。

私はイラオイの技を開発するうえで、ひとつ非常に強いイメージを持っていました。それは、イラオイが相手を攻撃して触手のところに移動させ、その触手が相手をはね返し(つまりナーガケイボロスがレスリングのロープ)、プロレスラーのようにイラオイがラリアットを決めるのです。

今後の予定

プロジェクト Lの開発は現在も着々と進んでおり、イラオイはまだ初期段階なため、まだまだ必要な作業はたくさんあります!ですが、イラオイの開発がもう少し進んだら、アニメーション、ビジュアルエフェクト、オーディオなどの分野から、皆さんの大好きな「触手使いの大柄なジャガーノート」がどのように形作られているか、報告したいと思っています。ゲーム全体の開発状況については、年末前にTomからアップデートをお届けしますので、楽しみにお待ちください。

また、それまでに何かご意見がありましたら、ぜひお聞かせください。