Worlds 2022の舞台はメキシコシティからニューヨーク、アトランタを経て、ついにサンフランシスコへと移りました。北アメリカで開催となるのは2016年以来、実に6年振りとなります。現地のファンは久しぶりのチャンスを心待ちにしてくれていたようで、観戦チケットは完売となり、ステート・ファーム・アリーナ(State Farm Arena)やチェイス・センター(Chase Center)は何万人もの観客で埋め尽くされました。そして一方では、現地での観戦と同時に数百万を超える世界中のファンたちが、オンラインで熱戦を視聴しています。 

「ライアットではオリンピックやサッカーのワールドカップと同じような、全世界を対象にしたライブ視聴モデルを構築しています」Worldsのライブブロードキャストプロダクション部門のマネージャー、Sam Chaimsonは言います。「ライアットが直接配信するのは英語の放送ですが、例えばフランスではパリにある外部パートナーの協力のもと、フランス語での放送が実施されています。他にも中国、ブラジル、韓国などなど、世界中でそれぞれの地域に合わせた番組を制作しており、世界中のファンがWorldsを最高の形で体験できるような体制が整っています」 

グローバルイベントチームは22の放送パートナーと協働することで、全部で21言語による放送を実現しています。 

「現地で起こったことを漏れなく伝えるだけでなく、Worldsのために制作されたグラフィック、音楽、動画をひとつのパッケージとしてまとめて、各パートナーに提供しています」Samは続けます。「Worlds Finalの視聴者数を7,000万人まで伸ばすことができたのは、これが理由です。拠点の規模の大小によらず、それぞれの地域と言語に向けて、最適な視聴体験を届けることができるんです」 

Worlds 2021のFinal、韓国のDWG KIAと中国のEdward Gamingの試合では同時視聴者数7,380万人を記録、1分間あたりの平均視聴者数(ニールセンではこの数値をテレビの視聴率の測定基準として用います)は3,000万人以上にのぼりました。どちらの数字もWorldsとeスポーツイベント全体の新記録となっています。 

上記の数字は全地域の放送を合算したものですが、その放送の内容は地域ごとに多少の違いが生じます。言語が変われば実況・解説者も変わり、地域が変われば語られるべきストーリーも変わるからです。Finalまでいけば話題は2つのチームに絞られますが、序盤のステージでは11の地域リーグから選出された24チームによる試合が組まれるため、各地域の視聴者に合わせてコンテンツが作られます。 

「私たちにとっての放送日は、試合の数日前からスタートします」ライブブロードキャストプロダクション部門のマネージャーを務めるEamon Frasherは語ります「ストーリーミーティングを行い、大会で最も注目されているストーリーや熱いマッチアップ、スポットライトを当てたい選手などについて、試合ごとに話し合います。北アメリカ、ヨーロッパ、オセアニアでは英語の視聴者が最も多いため、これらの地域とストーリーに焦点を当てることが比較的多いです。

とはいえ、英語圏のストーリーが最も優先されるというわけではありません。

「例えば、大会がスタートした時点でLOUDのDiego ‘Brance’ Amaralが人気急上昇中の選手であることは把握していました」Eamonはそう続けます。「そこからプレイインステージとChampions Queueを通して彼という人物が見えてきたので、そのストーリーを紹介する時間を増やすことに決めたんです。RNGにも同様のことが言えます。MSI王者になるもプレイインステージから戦うことを余儀なくされた彼らですが、そこから這い上がってくるだろうという予感があった。RNGには視聴者も注目しているだろうということで、時間を長めに確保しました」 

Worldsが進むにつれて語るべきストーリーは新たに生まれ、変化していきます。そのため、eスポーツプロダクションチームでは放送終了後に必ず経過報告ミーティングを開き、その日の出来事をすべて共有したうえで、次の放送日に取り上げるストーリーについて話し合います。 

「まずは、私たちの方で全世界の英語視聴者に向けたひな形を作るところから始まります」ライブブロードキャスト部門のプロデューサー、John Depaは言います。「放送が終わるのはニューヨークの深夜0時過ぎで、そこからLECのスタッフ数名を交えて放送後のミーティングを開きます。その後、私たちが眠っている間に、日中の勤務時間帯であるベルリンのチームが台本の執筆と次の放送のためのグラフィック制作を行い、朝起きたときにはその日の準備がすべて整えられた状態になっています」

Worldsのようなイベントでは、実行可能な計画は限られており、あらかじめ用意したストーリーとリアルタイムで起こる試合での出来事をうまく組み合わせる必要があります。 

「時にはGAM EsportsがTop Esportsを下すような番狂わせも起こるわけです。そんなときは『よし、予定は全部変更して、この試合について話すことにしよう』といった感じで進めます」Eamonは言います。「予定を変更する場合は、試合の途中でプロデューサーから各担当者にコンタクトを取ります。過去の試合について話す時間と、次の試合について話す時間のバランスを取ることも重要ですね」 

各地域の放送枠で何にハイライトを当てるのかについては、その地域の放送チームがそれぞれ決定を行います。中国の視聴者はLPLのチームを取り上げた今後の試合展開について聞きたいでしょうし、北アメリカの視聴者はVulcanなどの選手の試合後インタビューを見たいと思うでしょう。 

ヨーロッパか北アメリカがWorldsの開催地となる場合、大元となる映像はヨーロッパのLECと北アメリカのLCSが協力して制作を担当します。視聴者のもとへは各地域の放送チャンネルを通してその映像が届けられ、地域によっては試合後のインタビューも流れるわけですが、その裏では、ベルリンにいるLECのプロデューサーとロサンゼルスにいるLCSのプロデューサーがタッグを組んで奮闘しているのです。

 

 

放送の起点となるのは、当然ながら選手たちのいる会場です。そこからRiot Directを利用してライブ映像がロサンゼルスに送られます。Riot Directとは、普段のゲーム内でも利用されているサーバー設備で、ライブ映像はそこで全世界に向けてデータ処理され、ブラジル、中国、韓国、トルコなど、Worlds用の放送チャンネルを持つすべての地域のチームに送られます。放送はすべてそれぞれの地域の言語で行われ、その地域の視聴者に響くストーリーと共に届けられます。 

「会場のライブ映像と地域の放送を繋ぐこのデータの受け渡しモデルは、Worldsを唯一無二のものにしていると思います」とJohnは言います。「会場で起こっていることをリアルタイムに届けられるので、どこで視聴していたとしても、同じ時間と体験を共有できるんです。試合後は、各地域のコメンテーターがその地域独自のストーリーに焦点を当てて、試合の振り返りや今後の展開について語ります。こうすることで、より多くの人々に、それぞれが求める最高の視聴体験をお届けしています」 

ライアットが大きくなるにつれ、世界各地のeスポーツ用インフラへの投資も大きくなっています。Project Strykerの一環としてダブリンに設立された拠点もそのうちの一つで、データの受け渡しモデルは今後さらに改良されていくこととなります。LoL Esportsのストーリーを視聴者にお届けするべく奮闘している各地域のチームメンバーの能力も、より効果的に発揮できるようになるでしょう。 

「プロデューサーである私の仕事は、皆がひとつのビジョンに向かって動けるように尽力することです」Samは語ります。「しかし、最終的に放送を作るのは私ではありません。ファンのために価値のあるものを創造しているのは、グラフィックプロデューサー、リプレイプロデューサー、テクニカルディレクター、サウンドエンジニアといった、各部門のエキスパートたちです。最高の瞬間を映し出すには裏でカメラを操るオブザーバーの存在が欠かせませんし、そうした舞台が実現しているのは大会運営スタッフの存在があってこそです。ひとつの目標に皆を導くために私はここにいますが、最高の体験を創り上げ、奇跡を起こしてゆくエキスパートたちと共に仕事ができることが何より嬉しいです。 


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