私たちは競技性の高い、コンペティティブなゲームが大好きです。ライアットは2006年の創設以来、コンペティティブなゲームを専門に作り続けてきました。対戦や大会は、その性質上、プレイヤーから大きな情熱を引き出します。だからこそゲームをプレイしているときに感じる喜び、あるいは辛い気持ちにも、意義が感じられるのです。同時に、これは一部のプレイヤーが他者を攻撃したり、他のすべてのプレイヤーのゲーム体験を阻害する行為を引き起こす原因にもなり得ます。 

そこに問題が存在するのは確かです。私たちはライアットのゲーム内でのプレイヤーの問題ある言動に関する話を聞いていますし、そういった動画も見ています。私たち自身も対戦において経験しています。私たちが人間のありようを変えることはできませんが、より良いゲーム体験の構築を目指して、ライアットのゲーム内におけるプレイヤーの反応を変化させるべく試みることはできます。

私たちはゲームをもっと安全に、より包括的に、もっと公平で、そして最終的には、誰もがもっと楽しめるようにするための取り組みを積極的に進めています。

目標にたどり着くための困難は尽きることがなく、容易な解決策もありません。 

そこで、「プレイヤーダイナミクス」が登場します。デザイン分野としての「プレイヤーダイナミクス」の目標は、良いソーシャル体験を育み、悪影響の大きなやり取りを避けられるように設計されたゲーミング構造を作ることです。シンプルに言うと、「オンラインのコミュニティーを健全に育て、維持するにはどうすればいいか?」という質問に答えるための分野です。 

プレイヤーダイナミクスの構築の詳細およびそれがゲームデザインに与える影響については、今年初めに公開された2つのパートにまたがるシリーズ記事をご覧ください。 

今回の現状報告ではプレイヤーダイナミクスのデータに注目し、ゲーム内で健全な交流を作り出すために、そこから読み取れる内容についてお話しします。プレイヤーダイナミクスはライアット全体で機能するシステムとしてデザインされているので、その構築には複数の異なるチームが参加しています。セントラルプレイヤーダイナミクスチームはそのひとつであり、彼らはライアットのすべてのゲームの中心にいて、現在のタイトルおよび開発段階のタイトルの両方に影響を与えるシステムを開発しています。また、そのタイトル独自の問題を解決するために、各タイトルごとに専門のチームが設置されています。

 

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ライアットの全地域およびタイトルで寄せられた報告

世界中で数百万人の人々がライアットのゲームをプレイしてくれているという事実を聞くと、改めて身が引き締まる思いがします。驚くほど多くの試合がプレイされており、その中でプレイヤーが他のプレイヤーを報告する理由は、正当な懸念もあれば、上手くプレイしたとか、酷いプレイだっただけの普通の試合結果まで様々です。2021年には、ライアットがパブリッシングを行う地域での全タイトルの毎月の平均報告件数は240万件で、総報告件数は合計30億件弱となっていました。

30億件とは本当に、本当に膨大な数字です。全ライアターが1年間、365日、毎日これらの報告を審査することのみを仕事にしたとしても、すべての報告を審査するには、1人が1分あたり6件の報告を審査し続ける必要があります

さらに、それぞれの報告すべてを明らかなシグナルとして扱うことはできません。私たちが措置を取りたくないと考えるような報告もかなりの数が送られてきます。報告されているプレイヤー行動が悪いと感じられても、単に試合で上手くプレイできなかっただけでペナルティに値しないものもあれば、報告自体が意図的に悪意を持って行われている場合もあります。 

とはいえ、私たちの目標はすべての報告を調査することです。そのため、私たちは創意工夫して、ゲームを妨害する行動を大規模に検出できる自動化されたシステムを構築する必要があります。そのシステムは、ペナルティを適用すべき言動とそうでない言動を区別できる必要があります。たとえばAFKなど、簡単に区別できる行動もありますが、意図的な無謀行動やトロールは区別が簡単ではありません。私たちはこれらの検出方法を改善する作業を続けていますが、まだまだ先は長いと言えます。

私たちが作業を行っているものやゲームごとのデータについてお話しする前に、私たちのプレイヤーダイナミクスの戦略構築に役立った、私たちが学んだ重要な事柄についてお話ししておきます。ひとつ重要なことは、たまたま機嫌が悪かったプレイヤーと、繰り返し他者の体験を邪魔しようとするプレイヤーは違うということです。
ゲーム業界全体で、この割合は95/5となっています。つまり、ゲーム内で他者の邪魔をする人々の95%は、たまたまそれを行っただけなのです。そのようなプレイヤーにとっては、警告や軽いペナルティだけで再発を防ぐことができます。残りの5%は、継続的かつ故意に悪質行為を行っています。私たちは他のプレイヤーのゲーム体験を阻害するためだけに対戦待ちする人々は一切容認しません。

もうひとつ重要な点は、ペナルティの仕組みです。2021年にペナルティ措置を受けたプレイヤーのなかで、同じ年に別のペナルティ措置を受けたプレイヤーは10%未満です。

問題行動にはそれ相応のペナルティ措置が伴い、多くのプレイヤーはペナルティ措置を受けたことをきっかけに言動を改めています。 

このデータとゲーム業界全体でわかったことを念頭に置きながら、私たちはプレイヤー行動を評価するための複数の新たな方法を開発しました。現在、私たちが作業を進めている内容は以下のとおりです。

 

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将来導入予定

ボイスの自動評価システム(Automated Voice Evaluation)

ボイスチャットで悪質な言動が発生したかどうかを判断する際には、現在はプレイヤーから繰り返し送られる報告と手動のプロセスに依存しています。しかし、手動のプロセスは継続的な監視が必要となり、調査できる対象の数も限定されるので、私たちはボイス自動評価システムの開発に取り組んでいます。 

私たちが現在利用しているテキスト評価システムと同様に、ボイス評価システムはボイスコミュニケーションを利用して他者のゲーム体験を阻害している悪意のあるプレイヤーを自動的に検出できるようにデザインされます。このシステムが世界中の幅広い人々のボイスチャットによるコミュニケーションを検出できるようにするために、受け取った報告のひとつひとつが役に立ちます。私たちは問題のあるボイスチャットを検出しながらも、劇的なクラッチ後の盛り上がる瞬間を邪魔することはないようにしたいと思っています。 

この作業はセントラルプレイヤーダイナミクスチームが担当しています。最初にこのシステムが利用されるのはVALORANTで、ここで上手く機能することが分かれば、ボイスチャットを利用する他のタイトルにも拡大していきます。

テキスト評価システムの改善

ライアットのほとんどのタイトルでは、テキストがチームメイトや対戦相手との間での主なコミュニケーション手段となっています。また、これが悪質な行動の大きな要因にもなっています。私たちは今後もこの分野に大きな投資を続けていくつもりで、名前とチャットの両方において試合中のテキストの監視方法を改善していきます。不適切な名前の監視を改善するために、今後も機械学習への投資を続け、対応言語を増やしていきます。こうすることで、世界中のプレイヤーのために悪意のあるテキストを大規模に自動検出することが可能になるでしょう。 

また、ゼロ容認ワードリストも拡大していきます。単純に、ゲーム内で決して利用してはいけない言葉も存在します。アルファベットを数字に置き換えるだけでは、その言葉を使うことの意図は変わらないので、今後もこのリストのスペリングや言語のバリエーションを増やしていきます。 

セントラルプレイヤーダイナミクスが作成した新たなプロセスを利用し、それをライアットの全タイトルに適用して、LoLの過去のテキスト検出システムと置き換えます。これによって、LoLプレイヤー向けのテキスト評価システムが大幅に向上するでしょう。

信頼性に基づいた報告の評価

ライアットの自動検出システムの検知を逃れて、平均的なプレイヤーと比較して複数の試合に渡って大量の報告を受け取っている外れ値の検出能力を拡大します。このシステムは現在、コミュニケーション内の悪意ある言動のみに焦点を当てていますが、これを悪意のあるゲームプレイと不適切な名前にまで拡大する作業を行っています。 

このような対象の拡大を行うには、報告された言動を注意深く調査する必要があり、間違ってペナルティを与えないように、慎重な調整が必要になります。とはいえ、これまでのところは大きな効果を得られており、意図的な無謀行動など、検出しにくいものの、影響が大きな問題行動を特定するために大きな価値があると考えています。

リアルタイム評価システム

チャットベースの悪質行動に対してリアルタイムで措置を取る機能の開発を行っています。チームメイトに不適切なメッセージを送ろうとした際に、自分自身で考え直すことのできるようなシステムを想像してください。これによって試合中にプレイヤーが行動を改めることが可能になりますが、それがプレイヤー体験に決して影響を与えないようにするために、それが適切に機能するかどうか、複数のゲームで複数のシステムを試してみるつもりです。この作業は2022年に開始されており、適切に機能していることが分かれば、より広範囲に採用していきます。 

ProSocialへの投資

ProSocialな行動(社会性のある行動、ポジティブな言動)とは、簡単に言うと「他者のため」になろうとする意図のことです。

ゲームにおいて、単に他者の邪魔をするプレイヤーにペナルティを与えるだけでなく、他者のゲーム体験を向上させるプレイヤーに報いることを意味します。

悪意のあるプレイヤーを排除することに加えて、ポジティブな言動に報いる取り組みに焦点を当てる方法について、私たちは他の主要なゲームデベロッパーたちと協力して新たなフレームワークの開発を行っている最中です。これは大きなトピックであり、オンラインゲームのコミュニケーションにおいて意義のあるポジティブな変化を生み出すことができるものだと感じています。このトピックについては、今後さらに詳しくお伝えしますのでご期待ください!

業界のパートナーおよびコミュニティー

悪意のある言動は特定のゲームのみに限定される問題ではありません。 Fair Play Allianceや #TSCollective など、オンライン空間で安全なコミュニティーを作り出し、ポジティブな体験を育むことが重要だと考えているゲーム業界の内外のパートナーとの協力を続けていきます。 

パートナーと協力して知識を共有することで、ライアットのゲームをプレイするプレイヤーだけでなく、オンラインで交流するすべての人々に影響を与える複雑な問題への解決策を拡大することができます。

 
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ゲームの裏側にあるデータ

セントラルプレイヤーダイナミクス 

セントラルプレイヤーダイナミクス(CPD)はライアットのすべてのタイトルに携わり、プレイヤー間のコミュニケーションにおける問題のある言動を検出することに焦点を当てています。ゲーム内のテキストおよびボイスコミュニケーションに関連する報告はCPDのシステムを利用して評価されます。AFKや意図的な無謀行動などの、ゲームプレイ固有の報告は各ゲームのチームが担当します。 

テキストの報告に関しては、CPDを通した大多数の報告のなかで、1件以上報告があった1億2千万試合のうち、1300万試合で違反がありました。違反に対するペナルティ措置は違反の性質およびプレイヤーの過去の違反歴に応じて、警告から365日以上の利用停止まで様々です。

リーグ・オブ・レジェンドとチームファイト タクティクス

LoLのチームは現在、テキスト検出、AFK検出、意図的な無謀行為検出のすべてを総合して、毎月700,000件のペナルティ措置を執行しています。 

AFK検出システムであるLeaverbusterは、早期に試合を抜けて味方チームに悪影響を与えたプレイヤーにペナルティを与えるために、毎試合監視を行っています。

私たちはティア制度を利用しているので、頻繁にAFKを行うプレイヤーにはより厳しいペナルティが与えられます。チームメイトがAFKになったランク戦では、早期に降参する方法を提供し、チームメイトがティルトしたせいで不利益を被らないように、LP軽減措置も適用しています。 

しかし、AFKはチームメイトをティルトさせる方法のひとつにすぎません。他に意図的な無謀行動も存在します。これは検出が難しいので、誰かが意図的に無謀行動を行っているのか、単に上手くプレイできていないのかを確信を持って検出できるように、私たちは学習モデルを利用して、全チャンピオンで7つの異なるデータポイントを追跡しています。システム内で誤検出が滅多に起きないように、今後もアップデートを続けていきます。 

LoLチームのプレイヤー行動の取り組みについて詳しく知りたい方は、2022年初頭のこちらの投稿をご覧ください。

VALORANT

ボイスチャットに加えて、VALORANTのソーシャル&プレイヤーダイナミクスチームはAFKおよび意図的な無謀行動にも焦点を当てています。現在、1,000回のVALORANTのプレイあたり、約27人のプレイヤーがAFKとして検出されています。これらの一部はXPを稼ぐためのボットです。しかし、これらのボットは他のAFKボットが集められたロビーに入るようになっており、ダメージが与えられなければ、経験値は獲得できません。 

キーボードの前にいるものの、試合を意図的に投げてしまったプレイヤーに対しては、現在は無謀行動検出機能は1つの検出方法を利用していますが、もうひとつの検出方法を開発中です。 

現在の手法ではあらゆる入力を記録し、プレイヤーの良くないプレイが意図的なものだったかどうかを試合後に判断しています。しかし、この手法では無謀行動が行われた後にしか悪意のあるプレイヤーを検出できないために、なすすべなく11ラウンド負けてしまった時には役に立ちません。   

そこで、VALORANTチームはリアルタイムの無謀行動検出機能の開発を行っています。しかし、この問題に関しては、良くないプレイが発生する原因が様々であることから大きなグレーエリアが存在し、意図的な無謀行動はごく一部のみとなっています。VALORANTチームが誤検出を低く抑えることができるようになれば、試合後の検出と平行して、この新たな手法を導入する予定です。 

ワイルドリフト 

ワイルドリフトのプロセスは2022年に進化しました。以前はAFK検出はプレイヤーが入力を行っているかどうかのシンプルなチェックを行っているだけでした。この検出を回避するプレイヤーが存在したために、プレイヤーがゲームをプレイしていて、前に進むだけではない、意義のある入力を行っていることを確認する新たなレイヤーを追加しました。 

2022年には、ワイルドリフトに新たな無謀行動検出システムも導入されて、プレイヤーが良くないプレイを行っているのが意図的なものであると確信が持てるように、機械学習を導入しました。2022年3月以降、無謀行動検出システムは2,000件弱の無謀行動を検出しています。機械学習は学習を続けていくことから、無謀行動としてフラグが立つプレイヤーが増えていき、この数字も増加するものと考えています。 

最後に、ウィントレード(八百長)検出が存在します。これは私たちが“co-against”(協力敵対)プレイヤーと呼ぶものを含み、複数の要因をチェックしています。このプレイヤーは、同じプレイヤーの集団を敵に回して頻繁に一緒にプレイしているプレイヤーのことを指します。プレイヤーのパターン、試合の長さ、co-againstロビーにおける勝敗記録に注目して、検出システムはウィントレードを特定します。 

透明性を維持することの重要性

1試合だけではなく複数のタイトルに対象を拡大すれば、新たな挑戦が山積みになります。さらなるタイトルがリリースを控えていることから、最初からより良いコミュニケーションを実現できるように、プレイヤーダイナミクスの考え方をゲームデザインの初期段階から導入するように作業を行っています。 

同時に、私たちがライアットの様々なタイトルで収集するデータについて透明性を維持することも重要だと考えています。複雑な問題が存在し、それを真の意味で完全に解決する方法は存在しません。とはいえ、今後もライアットのゲームをプレイするすべてのプレイヤーのためにゲーム体験を改善する取り組みを続けていき、この目標に向けて私たちが行っている作業の現状報告を定期的に行っていきます。 

いつも私たちのゲームをプレイしていただき、ありがとうございます。